ショックだったけど世界が広がった日

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ショックだったけど世界が広がった日

まるで、頭を金づちで打たれたような衝撃だった。

アメリカ・ワシントンの田舎町。

現地の人の英語はまったく聞き取れず、ひたすら笑顔で「Yes」と答えるしかない。

大学時代に自分で貯めたお金で、1か月の短期ホームステイに行った。

英米文化系の学科を選び、「英語を使う未来」を思い描いていた中のショックな出来事だった。中学生の頃から英語が好きで、成績も良かったのに。

ただ、初めての海外生活で、自信が崩れ去る。

「英語ができる」と思っていたのは、狭い世界の感覚に過ぎなかったのだ。

この経験が、後のすべての原点になる。


初めての仕事でのやりがいと葛藤

「ありがとう」

現場でお客様に感謝されるたびに、心が動いた。

新卒で機械メーカーに入社し、研修インストラクターとして働き始めた時のこと。

パソコンに触れたことがない人から、エンジニアまで。
相手の理解度に合わせて、伝え方やアプローチを変える。
自分が教えて、わかってもらえた瞬間の喜びは、想像以上に大きかった。

気づけば、分野そのものよりも「教えること」に惹かれていた。

仕事にはやりがいを感じていたが、同時に違和感も芽生える。当時の職場には、「女性だから」という見えない制限があったのだ。

アメリカ支社に関わるチャンスがあったとき、周りのエンジニアは誰も行きたがらなかった。

なので、手を上げると…

「女の子だから無理でしょ」

もちろん私の仕事は認められていたし、エンジニアでないので行けないことも理解していた。

ただ、その一言が、ずっと心の奥に引っかかった。

「ここに居続けるのか。それとも、自分の可能性を試すのか」


家族の意外な反応と「橋」を渡る決断

葛藤しながら、自分の将来について真剣に考え始めると、大学時代からの「留学したい」という淡い思いが蘇る。

「うちにはそんな余裕はないから」

学生時代は経済的な理由もあり、当時の母はいい顔をしなかった。

会社を辞めて留学なんて、将来の保障もないのに、どう思われるかな。反対されることを想定しながら、思いを打ち明けると…

「自分で貯めたお金なんだし、好きに使えばいい」

なんと賛成してくれたのだ。

その後、祖母の病気が発覚し、お見舞いに行った時。

「母には我慢させてきたし、あなたにチャンスがあるならやってみなさい」

と背中を押してもらえた。

さらに、しばらくして父からおみやげをもらった。

法隆寺のお守りの裏に、「夢」という一文字が書かれている。

その瞬間、自分は応援されているのだと感じた。
周りの反応も、留学することに対してポジティブになっている。

家族に背中を押してもらった気がして、退職して留学することを決めた。


“わからない”を知っているから、伝えられる

語学学校でTOEFLのスコアを取り、大学院へ進学。周りは英語が堪能な人ばかりで、自分のレベルを思い知る。自信もなかった。

それでも絶対に「後戻りはしない」と決めていた。
卒業するまでは日本に帰らない、と。

「できるのかな」から「やるしかない」へ。
崖っぷちの状況が、自分を前に進ませた。

大学院では英語教授法を学び、理論と実践の両方に触れた。さまざまな授業を見学し、「どうすれば人は効率よく学べるのか」を考え続けた。

同時に、こんな想いが芽生えていく。

「自分ができなかったからこそ、できない人に寄り添える存在でありたい。」

かつての自分のように、英語に挫折した人たちを支えたいと思うようになった。


叶ったはずのチャンスより、選んだ道

卒業後は現地の教育機関で働く。最終面接はアメリカ人との一騎打ち。見事合格!

その後、働く中でアメリカにもう少し残りたいと労働ビザを申請するもなかなか下りなかった。申請しても返事は来ない。いつ出るかもわからないまま、時間だけが過ぎていく。

このまま待つのか、それとも帰るのか。考え続けても答えは出ず、未来を見据えたとき、帰国を決めた。周りにも伝え、お別れ会も開いてもらった。

なんとその数日後に、ビザが下りたのだ。

帰るか、残るか。もう一度、振り出しに。

「どうしよう、もう帰国の準備をしているところなのに…」

また白紙に戻して考える。夜も眠れないくらい葛藤した。
悩んでいたとき、クラスメイトが声をかけてくれた。

「それは悩むよね。でも、そもそもなんで大学院に行こうと思ったの?」

「…日本で教育に関わっていて、子どもたちに英語を教えたいって思ったからかな」

自分で口にして、はっとした。

そうだ。もともと、そのために来たんだ。

日本で英語教育に携わるために留学した。だったら、戻ろう。そうして、帰国することを決めた。

今でも、ビザのレターは手元にある。悩んだとき、「あのときの選択は間違ってなかった」と、自分に言い聞かせるために。


どれだけ頑張っても、埋まらない差

「え、海外の大学院も出たのに時給制の仕事なの?」

姉に驚かれた。

帰国後、日本の学校で働くためには教員免許が必須だった。アメリカの大学院は出たものの、当時は資格を満たしていなかったので、子供向けの英会話学校で働き始めた。

子どもたちに英語を教える日々は楽しい。けれど、現場で見えてきたのは、教育の現実。仕事の大半は保護者対応や運営。「教える」だけではない。純粋に「子供に教えること」が好きだからこそ、あの環境で働けたと今になって思う。

「もっと大きなことがしたい」

こんな思いが湧いてきて、2年働いた後、英語教育企業へ転職。カリキュラム開発や講師トレーニングに携わるようになる。大学院で理論を学び、無数の実践の場を自分の足を運んでみてきた知見、現場で教えた経験があったからこそ、「机上の空論ではない教育」をつくることができた。先生と生徒の両者が成長する姿に、感動と喜びを感じ、これこそが自分の天職だと感じた。

ただ、開発に携わって気づいたことがあった。

同じカリキュラム、同じ先生でも、生徒によって成果に大きな差が出る。その差はどこから来るのか。もっと良い教え方はないのか。講師の指導法を改善し、現場を回る。それでも、どうしても最後に埋まらない差がある。

そんな風に感じ始めた頃、ちょうどAIが一般の人の生活に入り始めてきた。

「もしテクノロジーで、この差を埋められるとしたら?」

そう考え始めたタイミングで、EdTech企業とのご縁があった。


すべてをつなぐ“橋”でありたい

現在は、EdTech企業でLearning Designerとして、 AIやデジタル技術を活用して、英語学習の仕組みのデザインに関わっている。

AIを活用し、生徒ごとの理解度の違いをサポートする仕組みづくりを目指している。

でも同時に思う。

「人が人に教える意味は、なくならない。」

AIを活用してどれだけ個別最適な指導ができても、先生に質問したくなるときがあったり、先生の人間味溢れた温かみのある支援に背中を押されたり、挫けそうな心を支えてくれる。人対人のやりとりの瞬間にしか生まれない関係性が大事だと思う。

さらに、グローバルに仕事で活躍する人の集まるコミュニティにも参加し、海外駐在員、外資系企業へ転職した人など、様々なバックグラウンドを持つ人と接するようになった。

グローバルなマインドセットも英語学習のカリキュラムに取り入れてきた。いくら語学が流暢でも完ぺきでも、英語でコミュニケーションをとる上で、マインドセットは大事である。そして、このような機会はやはり人を介して得られるものだ。

だからこそ、自分は“間”に立ちたい。

自分が立ちたい“間”

  • 人とテクノロジーの間。
  • 教える側と学ぶ側の間。
  • 日本と海外の間。

英語は、異なる国々、人々、また人と機会、人と世界、さらにその人の未来の可能性につなぐ「橋」だと思っている。心理的な壁と、物理的な距離を越え、新しい世界へとつながる橋。

どちらかに偏るのではなく、その間に立ち、つなぐ存在へ。


可能性は、誰かに決められるものじゃない

社会にはまだ、「こうあるべき」という固定観念が多い。年齢、性別、学歴 -そうしたラベルで可能性を決めつけてしまう。

日本の英語教育は、すぐに大きく変わるものではない。
「何をやっても変わらない」と言う人もいる。

一人で社会全体を変えることはできない。
それでも、自分の周りだけでも、変えられるかもしれないという思いがある。

正解は一つじゃない。遠回りしてもいいし、やり直してもいい。

自分自身がそうだったからこそ、そう言える。

英語教育の世界には、いろんな立場の人がいる。でも、この領域に対する想いだけは、自分の中で誰にも負けないくらい強いと思っている。その想いでさまざまな問題、立ちはだかる壁を乗り越えてきた。

たとえ会社が変わっても、環境が変わっても、
英語教育に関わり続けたい。

持っていなかった教員免許も、前職で働きながら必死になって取得した。

自分にとって、これは「やりたいこと」ではなく、「やり続けたいこと」だから。

「English Bridge」に込めた思い

これからも、自分にできる範囲でいい。
目の前の誰かにとっての「橋」を、かけ続けていきたい。

そんな願いを込めてブログタイトルも「English Bridge」と決めた。偶然にも私の名前の中に「橋」という文字が使われている。人は生まれた時から名前に託された使命があるという。使命とは、「命を使う」と書く。情熱を注げる大好きな英語教育を通して、皆さんの可能性に満ちた未来への「橋渡し」役になりたい。

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